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「役に立つ」の暴走:現代日本で失われた人文知の価値と井上円了の挑戦

現代は科学的世界観による唯物論、即時的、実用的な結果・成果を重視する価値観が支配する時代である。より求められる効率化、数値化。それにより、人間らしさ、精神的なもの、つまり人はなぜ生きるのか。なぜ死ぬのか。生命とは、存在とは。それらを人としての根本を追究する「人文知」の価値が著しく失われてしまった。

「役に立つ」の暴走:現代日本で失われた人文知の価値と井上円了の挑戦

「何の役に立つのか」ノーベル賞不要論に見る冷笑

今年(2025年)のノーベル賞に日本人2人が受賞した。素晴らしいことだが、同時にネットなどでは必ずノーベル賞文学賞・平和賞不要論が散見される。確かに物理、化学、医学と違い客観的な基準に乏しい分野ではあるが、当のノーベルが制定したのだから文句を言うのは筋違いである(経済学賞は本来の「ノーベル賞」ではない)。こうした声には「人文知」を「無駄なもの」とする排他的な冷笑が見て取れるだろう。他方、理系分野の中でも理論物理には冷たい風が吹くことがある。以前観た情報番組では、物理学賞受賞を受けて「スーパーカミオカンデ」についての説明がされると、「結局これって何の役に立つのかわからない」という趣旨のコメントで締められた。「何の役に立つの?」哲学科卒の筆者も数え切れないほど浴びた言葉である。

古代から続く実学重視の国:井上円了が挑んだ「精神の近代化」

日本は実学重視の国である。この傾向は古代から変わっていない。仏教が伝来した際、大和朝廷が期待したのは国家鎮護のための呪術的な力だった。悟りのための修行や深遠な哲学の研鑽をしたのは一部の専門家のみである。学者肌だった最澄が帰国後期待されたのは、複雑な教学ではなく、付属的に学んだ密教の呪術性だった。国が留学僧に期待していたのは国家鎮護や病気平癒にすぐ効果を出す呪力であり、難解な哲学・思想ではなかったのである。やがて密教の正統伝承者・空海が登場すると、その呪術的な加持祈祷が大いにもてはやされた。そして最澄の開いた天台宗も後継者の円仁・円珍が密教を取り入れることになる。
こうした傾向が現代に直結するのは明治時代の富国強兵政策からといえる。「文明開化」を迎えた日本は欧米列強に追いつき強国になるため、ひたすら具体的な成果を求め、世界初の「工学部」すら生み出した。急速に進む「物質的な近代化」にNOをつきつけた一人が井上円了(1858〜1919)であった。円了は文明開化の裏で人心が荒廃していると見抜き、現在の東洋大学の前身となる「哲学館」を創始。哲学館は「哲学は万学の王」として実学偏重へのアンチテーゼを掲げ、西洋的理性と東洋的道徳(仏教)を統合する「精神の近代化」を試みたのである。

格付けで軽視される人文系大学と、海外における「哲学の王」の地位

円了の「哲学館」は東洋大学として現代でも健在だが、東洋大学はいわゆる「日東駒専」の一角で、現代社会の格付け基準では中堅私大とされている。戦後の高度経済成長期における日本社会は「文明開化」同様「実用性」「即戦力」を重視する方向に進んだ。そうした中で「哲学・宗教・倫理」といった人文系学問は、経済的利益に結びつきにくく、精神的・文化的価値を重んじる教育は軽視された。結果として、思想的には深い伝統を持ちながら、社会的評価では“中堅”扱いになったと思われる。実学重視の観点からすると、これら精神的学問を基軸とした大学が、早稲田(大隈重信)慶応(福沢諭吉)といった政治・経済に強い大学、または上智・ICUといった国際色の強い大学に追い抜かれていったのは必然だった。

また、この中では曹洞宗の学術研究学寮「旃檀林(せんだんりん)」を母体とする駒澤大学も、現代に至るまで仏教研究の分野では権威的な存在であり、一般的な評価以上の歴史と実績がある。

本来、哲学館や駒澤仏教学の伝統は、京大の京都学派や東大哲学、宗教科などと比肩しうるレベルだが、現代の価値観(偏差値、就職率、政財界の人脈など)の前では意味を失ってしまうのが現実である。

では海外はどうか。「哲学の国」ドイツ、「現代思想の本場」フランスは、さすがに人文系学問の地位が非常に高く国からの予算も多い。唯物論に近い経験論や、産業革命を生み出したイギリスでも、オックスフォード、ケンブリッジら歴史ある大学では価値ある学問とされている。それに比べ日本では人文・社会科学の論文または学術雑誌の数が極めて少ない。人文知はヨーロッパ国家の文化・精神的基盤であり、社会を導く知識人・エリート層の必須教養であり、その学問的権威は社会的に認知されている。哲学を生んだヨーロッパでは今も「哲学は万学の王」なのである。

情緒と美意識の国、日本:「学」として体系化されなかった精神性

このような反論もあるかもしれない。「万葉集」や「源氏物語」など日本人は世界に誇る文学や芸術があるでないか。これらを見ても実学重視とは言えないと。確かに日本は古来より短歌、俳句、小説、日記、随筆とあらゆるジャンルを網羅してきた。だが公的な学問は実学、文学・芸術は私的な趣味として切り分けられてきたようである。おそらく「もののあわれ」「以心伝心」「わび・さび」というような美意識や文学的素養に関わる対象に対しては、言葉では表せないもの、形にはできないものとして、ヨーロッパのように体系的な人文知は形成されなかったのではないだろうか。

今こそ「人間の根本」を問う「人文知」の復権を

「役に立たない」人文知軽視の流れは止まらない。現代社会のほとんどの現場では、スピード感を持って、即時的な結果を出すことを求められる。それはそれで正しいのかもしれないが、人文知を軽視することは人間らしさ、人間の精神を軽視することにつながる。それでいいのだろうか。生とは何か、死とは何か。生命とは、存在とは。これら人としての根本を考えられるのは、究極には人文知だけである。それを「役に立たない」と切って捨てていいはずがない。円了の言う「精神の近代化」は、現代でこそ重要な課題である。

参考資料

■芝山盛生「学術雑誌による人文・社会科学分野における国際研究動向の分析 」『NII Journal』2号 国際情報学研究所(2001)
■拙稿「井上円了が哲学を学ぶ為の「哲学館(現 東洋大学)」を創立した理由

ライター

渡邉 昇

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