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変人扱いされながらも仏道の悟りを開いた曹洞宗の僧・桃水雲渓

東京都小金井市の東京学芸大学こども未来研究所内に、『変人類学研究所』が設けられている。この研究所は、「誰もが保持する生得的で個別の潜在能力・創造力を維持し、伸ばすための方法を模索するための、実践型の研究機関」である。

変人扱いされながらも仏道の悟りを開いた曹洞宗の僧・桃水雲渓

変人類学研究所が定義する変人学とは

「変人学」とは、以下の通りである。

1.「変」という語に集約されてきたような異常性やマージナリティ(境界性)、マイノリティの持つ特異な視点が、社会・文化空間においてどのように扱われてきたのかを研究することにより、インクルーシブ教育(包摂する教育)に向けた基礎研究を促進する。

2.周縁化されたこども達の独自の能力の源泉や、その維持力・拡張力のメカニズムを明らかにし、急激に変動する現代社会に適合的な、次世代のクリエイティブ教育(=変人教育)の構築を目指す。

偉人と変人は紙一重だがその後の人生は大きく異なる

一般に「変人」「変わり者」というと、どうしても周囲からのいじめや無視、今日のインターネット社会であれば、SNSにおいて、「過去のあら探し」または、全くの事実無根のエピソードなどを含めた誹謗中傷が、たとえ著名人に限らず、全世界に向けて容易に拡散され、「デジタルタトゥー」として永久に残ってしまう。そして「変人」「変わり者」とされた側は、「変人こそが社会を変革できた!」などと人々に称賛されるような、目ざましい事績を残すことができた人は多々存在する。

しかしその大半は、鬱・不登校・引きこもり・自暴自棄による様々なセルフネグレクト・自殺…など、必ずしも幸せとはいえない日々を過ごす、または生涯を送る羽目となった人々も少なくない。そういった不幸を未然に防ぐために、東京学芸大学における「変人類学」の今後の興隆・発展に期待したいところであるが、江戸期に「変人」だったからこそ、仏道の悟りを開いた人物がいた。「乞食桃水(こつじきとうすい)」とも称された曹洞宗の僧・桃水雲渓(とうすい うんけい、1610頃〜1683)だ。

乞食桃水(こつじきとうすい)と称された曹洞宗の僧・桃水とは

桃水は筑後国柳河(やながわ、現・福岡県柳川市)の商家に生まれた。両親が浄土宗の熱心な信者だったことが影響したのか、幼い頃は仏像を遊び道具にして、決して手放そうとしない。それを心配した母親がいくらかの小銭を握らせ、他の遊びをするように促しても、小銭を地面に投げつけて、「銭(おあし)よりも仏像のほうが好きだ!」と言い残し、仏像を抱いたまま、家から飛び出してしまう。両親が仏壇の前でお経を唱えていると、一緒になって唱える。このように桃水は、周りの子どもたちが好むことには一切関心を示さない「変わり者」であったことから、一般社会で生きること、並びに商家の跡取りとしては不向きであるとして、7歳の時に肥前の曹洞宗の寺・圓應寺(えんおうじ、現・佐賀県武雄市)の圍巖宗鐵(いがんしゅうてつ)のもとに預けられ、剃髪した。

独自にこだわった桃水

その後、同国島原(現・長崎県島原市)、肥後国川尻(現・熊本県熊本市)と、九州西部・有明海(ありあけかい)周辺の寺で修行を重ねていたが、桃水は「自分なり」そして「自分だけ」の「やり方」にこだわり続けていた。ある時は3日断食し、ある時は終夜、寺の中庭に立ってお経を唱え続けた。またある時は山奥に入って野宿し、何日も寺に戻らない。更には大きな川の沢の上などで、昼夜関係なく座禅を組み続けていた。そのような桃水に対し、寺内のみならず、近在の人々は褒めたり驚いたりするばかりでなく、悪口を言ったり、怪しんだりしていた。ただ師匠の圍巖は、桃水を「風癲漢(ふうてんかん、常軌を逸した行動、またはその人)」と呼びはしていたが、決して余計な口出しや叱責などは一切しなかったという。

修行の旅に出た桃水

このように厳しい修行に熱心で、「やがて衆生(しゅじょう)の導師となる」という強い使命感を持った桃水にとって、「保守的」そして狭い「田舎の寺」の中にとどまり続けることは、強い苦痛となった。また、例えば、桃水が13歳の時、橋の上で葵の花を持って佇んでいたところ、日頃、どんぐり目でぼんやりした様子の桃水を馬鹿にしていた寺の檀家の1人が見つけ、「葵の花はどうして赤いのか?」と尋ねた。すると桃水は、「橋だというのに、どうして中を渡るのか?」と切り返す才知や聡明さ、そして徳を慕って集まる人が多かったことが煩わしくもあり、20歳を過ぎた元和元(1620)年〜寛永5(1628)年頃、江戸に向けて修行の旅に出た。最初は、かつて神田駿河台(現・千代田区)に所在し、学寮・栴檀林(せんだんりん、駒沢大学の前身)を擁していた吉祥寺(きちじょうじ)(きちじょうじ、現・文京区駒込)に身を寄せた。

しかしそこで行われていた学問や修行は、桃水からすると、常々師の圍巖が人間の5つの慾のうち、色慾や食慾、睡眠慾よりも克服しがたいものとして強く戒めていた、評判・名誉・尊敬に心をかける「名慾」、金や物ばかりでなく、自分の利益になるように取り計らおうとする「利慾」という2つの慾を超克するための思想などは全く存在せず、既存の名刹と同じであるように思われ、物足りないものを感じていた。そこで桃水は、下谷(したや、現・東京都台東区)にあった、曹洞宗のある寺院に仮寓することにした。

ひたすら板塔婆を変え続けた桃水

すると、その寺では、何十本もの板塔婆(いたとうば)を垣根代わりにして、周囲に巡らせていたのだ。古い板塔婆ばかりでなく、真新しいものさえある。しかも寺内には小さな畑があったことから、まき散らされていた肥料で板塔婆が汚されてもいた。それらを目にした桃水は、板塔婆ことストゥーパは、そもそも仏身を顕(あらわ)すものである。そしてそれは、信心深い檀徒による、死者の供養のための墓標だ。それがこんなことに…と、悲しい気持ちになった。しかし桃水は「妙案」を思いついた。町に托鉢に出かけ、そこで集まった浄財で板を買い求め、日が暮れるのを待って、板塔婆を引き抜き、そこに新しい板を建てた。更に引き抜いた板塔婆を抱えて隅田川に行き、読経と共に流し、供養した。しかし桃水はこのことを寺の住職には一言も言わず、毎日黙々とその「ルーティーン」を続けた。

その行為が認められた桃水

ある時、住職が畑の作物を見ようと、裏庭に出た。すると、畑の周りの板塔婆は全て、板塀になっていた。驚いた住職は寺の若い僧に話を聞くと、全て桃水がやったことだと答えた。それに住職は深く恥じ入り、まだ残っていた周囲の板塔婆をすべて取り払い、新しい板で高塀を作らせた。当時の江戸市中のあまり著名でない、それゆえに富裕でなかった中・小規模の寺では、古い板塔婆を垣根代わりにしていることが「当たり前」であったことから、この寺だけが「罰当たり」な行いをしていたわけではなかったのだが、下谷や浅草界隈の他の寺も、桃水の行いを倣う格好で、古い板塔婆を垣根に代用することを廃止するようになったという。

桃水の最期

その後の桃水は品川・東海寺の沢庵(1573〜1646)などの名僧に教えを請うた後、肥後に戻る。長崎に赴いて、明から来日したばかりの隠元(1592〜1673)と対面したりもした。師・圍巖の跡を継いだ後、大坂(現・大阪府)、肥後、島原の寺の住職を歴任した。そして「大和尚」の位を得たものの、寛文8(1668)年、60代になってから突如出奔。伊勢、京都、大津などを漂泊した。その際、今日で言うホームレスの人々と共に過ごしていたこともあった。晩年には京都の鷹峰(たかがみね、現・京都市北区)で酢屋を営み、「道全(どうぜん)」または「通念」と称していた。そして天和3(1683)年9月19日に亡くなった。遺偈(ゆいげ。禅僧が行う、臨終の際に残す漢詩)は、

   七十餘年快哉(七十余年の生涯は楽しかった) 
   屎臭骨頭堪作何用(骨の節々から屎尿の匂いがし、もう何もすることができない)
   咦真帰処什麼生(い〜!真に帰るべきところ(涅槃)はどうであろうか)
   鷹峰月白風即清(鷹峰の月は白く、風は清々しい)



だった。桃水の墓所は京都市伏見区の仏国寺(ぶっこくじ)にあり、墓石には「雲渓水老宿之塔」とだけ、刻まれている。

変人かどうかなど、それ自体が意味をなさない世界であったなら

もしも将来、「多様性」「多文化共生」が当たり前のものとなり、「変人」が生きやすい世界が実現したとしたら、桃水のような「変人」が「普通の人」、或いは、「あるべき人物像」となるだろう。そうなったとしたら、今現在、特別な個性や魅力、または「アク」がなく、「無難」であるがゆえに社会にうまく適応し、「みんな」に愛される「あるべき人物像」そのものの人が、逆に「変人」となってしまうかもしれない。そうではなく、「変人」「普通の人」などという人の「分類」概念そのものがなくなってしまうのであればいいのだが…。

参考資料

■高見道見『聖僧乞食桃水』1903年 仏教館
■加藤咄堂(編)『話し草 修養資料』1908年 東亜堂
■樋口紅陽『すねもの奇人変人』1921年 日本書院
■釈道円『禅林逸話集』1926年 聖山閤書店
■宮崎安右衛門『野聖乞食桃水』1926年 聚英閤
■田中茂『乞食桃水傅』1939年 建設社出版部
■全日本仏教会・寺院名鑑刊行会(編)『全国寺院名鑑』1969年 全日本仏教会・寺院名鑑刊行会
■総合佛教大辞典編集委員会(編)『総合佛教大辞典 下』1987/1988年 法藏館
■面山瑞方(著)・能仁晃道(訳・編)『乞食桃水逸話選』2001年 禅文化研究所
■濱島正士「塔婆」國史大辞典編集委員会(編)『國史大辞典 第10巻』1989/2003年(187−192頁)吉川弘文館
■伊藤唯真「卒塔婆」『精選日本民俗辞典』福田アジオ・神田より子・新谷尚紀・中込睦子・湯川洋司・渡邊欣雄(編)2006年(332−324頁)吉川弘文館
■小嵐九八郎『日本名僧奇僧列伝 いのちというは、仏道』2010年 河出書房新社
■藤沢衛彦『日本の伝説 江戸東京』2018年 河出書房新社
■「『変人』が世の中を変える! 東京学芸大学・小西先生が語る、“ちょっとズレている人”の魅力」『ニッポン放送』2021年9月8日

ライター

鳥飼かおる(掲載日:2021/09/27)

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