死装束とは？
死装束とは、遺体に着せる衣装のことです。白い和服で、左前を合わせにして着せます。白装束とも呼ばれます。昔は遺族の方が縫って用意していましたが、最近では葬儀会社が用意するケースがほとんどです。
その一式ですが、まずは遺体に着せる白い和服を経帷子（きょうかたびら）といいます。仏陀や菩薩の象徴である梵字などが記されています。頭につけるのは三角頭巾、その上に、浄土へ旅立つ際に雨や雪、日光を浴びないための笠をかぶせます。足には白い足袋とわらじを履かせ、脚絆（きゃはん）と呼ばれる服飾品をつけます。手には手甲と呼ばれるものをつけ、数珠と杖を持たせます。そして、三途の川を渡る際の渡し賃として、六文銭を入れた頭陀袋を持たせます。
死装束を着せる目的とは、死者が浄土へ旅立つ際の準備です。その旅路は、山あり谷ありの険しい道であるとされるため、このような衣装が用意されることとなったのです。ちなみに、死後すぐに極楽往生すると考えられている浄土真宗では、この旅路という考え方はないため、死者に着せる「死装束」という考え方はありません。
死装束の豆知識：三途の川の渡し賃とは？
死装束の一つで、死者に持たせるものとして、「三途の川を渡るための六文銭」がありますが、どのような目的でこれを持たせるのでしょうか。
三途の川のほとりには、老夫婦の鬼が住んでいると言われています。三途の川を渡ろうとすると、その鬼に衣服をはぎ取られ、衣服によって生前の罪の重さがわかり、その罪の重さによって三途の川のどこを渡るのか決められてしまうとされていました。罪が重い者は深くて流れの速い場所を渡らなければならず、結局渡りきれずに地獄に流されてしまいました。しかし、江戸時代になると、六文銭を持っていれば、衣服をはぎ取られることはなく、善人が渡る橋を渡って行けると考えられるようになったため、死装束には六文銭も含まれるようになったのです。昔は、穴のあいた寛永通宝が棺に入れられていましたが、今は火葬がほとんどであり、金属では適さないため、紙に印刷された六文銭が入れられています。
ではなぜ「六文銭」なのかですが、死後、成仏しなかった者は、ある六つの世界のいずれかに生まれ変わるという考え方がありました。それを「六道」と呼び、天上・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄、このどこに生まれ変わっても良いように、各お地蔵さんに渡すための六文銭を持たせたのです。
